小島やよいのアートママ奮戦記

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5月のにおい

むせかえるような新緑です。
雨が多いからだろうか。
数年前のタカノ綾さんの作品に
「5月は精液のにおいがする」という絵があった。

そうなんだよね、と思ったが、
いつからそう知っていたのか思い出せない。
数年前に、幼い女の子が大人の男に暴行される事件があった。
彼女の証言のなかに、そういうにおいだったという部分があり、
その的確な表現からして信憑性が高いとして、
否認する犯人の主張が覆されたのだった。
それ以来、5月のにおいを嗅ぐと、
その女の子の受けた傷の深さを連想してしまい、
息苦しくなる。

とっくに終わってしまったけど、
タカノ綾個展「都会犬(。V・)/」
(@渋谷パルコギャラリー)は良かった。
都市に生きる女の子(ときどき男の子も)たちの
凡庸な日常から飛び出して、飛ばされていきたい願望と、
愛してやまない大切なものやひととの思い出、
それらが渾然一体となった幻想宇宙。

タカノさんは大のSF小説好きで、すごい読書量らしい。
一度、トークでご一緒したときに、私がその分野にあまりにも無知で
話がふくらまず、申し訳ない思いをした。
画集&コミック集『トーキョースペースダイアリー』(早川書房)
には、「都会犬(。V・)/」で観られた作品とともに、
彼女の好きなSF小説へのオマージュ・コミックが収められている。
『SFマガジン』に連載していた24編のうち半分なのだが
彼女自身が日常から<飛ばされていく、行き先>として
それらの世界が描かれていて、
愛にあふれるその描写に触れると、12編の小説が
たまらなく読みたくなる。
同時に、タカノ綾ワールドの秘密にも触れられた気がする。

ぽわ〜ん、と、絵のなかに浮遊する女の子と同じように
ふわふわした存在感のかわいいタカノさんだけど、
いろいろなことを知っていて、しっかりと硬いコアがある。

5月のにおいは、タカノさんの宇宙も思い出させて、
生きていること、さまざまな運命を背負った女の子たちのこと、
めくるめく想像世界に私を連れて行く。

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