小島やよいのアートママ奮戦記

« 教育再生会議っておかしくない? | home | RQ 3歳になりました! »

三沢厚彦「ANIMALS+」@平塚市美術館

先週日曜日に家族で行ってきました。
三沢さんの「動物の彫刻」は、昨年の「A to Z」展で「街」に生き生きとした動きを与えて
いたので、美術館での個展をぜひ観たいと思っていた。
RQも「きりんさん、また会いに行く?」と訊くと「うん、いく!」。
天気もよいので,ドライブで行くことになった。
(5/27まで。http://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse

到着すると、ちょうど三沢さんと舟越桂さんとのトークの最中で、
会場に入りきれない人たちがモニターで様子を観て(トークを聴いて)いる。
入口で小さいサイズのきりんが出迎えてくれる。
(この作品だけ,記念撮影可。)
IMGP2617.jpg

2階に上がると、白い小屋の中にシロクマが立っている。
graf制作の小屋は、「A to Z」展や、2001年に横浜美術館で開催された奈良美智個展
「I don’t mind, if you forget me.」のドローイング小屋を彷彿とさせる。
「Animal」シリーズの前に制作されていた「コロイドトンプ」のシリーズ(1995〜99年)から
展示室内の展示は始まる。木やいろいろなものを拾い、寄せ集めて作った作品は、
ものの集積としての存在感や迫力があり、こどもたちも「おー、すげー」と感嘆しながら観ていた。
そして「Head」や犬、猫など小さなサイズの木彫の部屋。
ドローイングも展示されていて、必ずしも「この絵」と「この彫刻」が直接重なるわけでは
ないのだが、彫刻にない動きや軽やかさのようなものがドローイングの動物たちには感じられて、おもしろい。

通路のようなスペースに,村田朋泰さんとのコラボレーション作品がある。
村田さん独特の、異次元世界と出会ってしまった動物たち…。
小さな劇場世界を楽しみながら進んでいくと、広い展示室に佇むたくさんの動物たちが,
こちらを見ている。
ほぼ実物大の?象、きりん、ヒョウ、虎,猿、シマウマ、ブタ、ウサギ、シカ、カンガルー、リス…。
そして一対のユニコーン。
ユニコーンだけは想像上の動物(?)だけど、ほかの動物たちと同等に存在していて、
違和感がない。
作品は、床に,直置きされていて、バリアーも何もない。
手を触れない限り、自由に近づいて観ることができる。
やっぱり彫刻,特に木彫は、近くで鑿(のみ)あとをじっくり観たいよなあ。
三沢さんの彫刻は特に、その鑿あとや彩色に特徴があり、実際に対峙してみると
その存在感が際立って迫ってくる。
とはいえ、キャーと喜んで手を触れようと走り寄るRQを、がっしと抱え込んでいるのは大変。
彼は特にウサギが気に入って、「うさぎさん、かわいいねー」としきりに話しかけている。
でもね、いわゆる「かわいい」顔はしていないのです。
小動物の、その姿の愛らしさはよく表れているけど、愛らしい顔には作られていない。
そう、どの動物も、ちょっとヘンな顔、というか、人間みたいなのだけど、人間だけでもないし、不思議な表情をしている。
親しみやすくはない。かわいくもない。けど、向かい合ってしまう。

そのことについて、展覧会カタログとして出版された作品集『ANIMALS +』(求龍堂刊)
に収録されている、三沢さんと酒井忠康さんの対談での、酒井さんの表現がうまい。
「…動物に抱く思いをあなたの作品に重ねるという作品ではないんだよね。イヌならイヌ,ネコならネコを飼っていて,長い対話の中で出てきたという感じのものではなくて,ずっと隠していて誰にも見せないけれども,イヌやネコの中に宇宙人がいて,そいつを出してきていると思うんだよね(笑)。(中略)こいつらが全部宇宙に住んでいる動物で,一応,地球上の動物の外装を借りているけど,一皮剥いたら違う。そういう想像も抱かせる。…」
そう、そんな違和感なんだけど、「存在」として気になってしまう。
という感覚をもたらすのが、彫刻であり作品であるということなのかなと。

でもRQは、家に帰ってからもずっと「うさぎさん、かわいかったねー」と嬉しそうに
話していたので、彼の「カワイイウサギコード」にはハマったのだろう。

さて、その作品集では酒井さんのほかに、絵本『ぐりとぐら』の原作者である中川李枝子さんと、
写真家の森山大道さんが対談していて、それぞれ非常におもしろい。
酒井さんは、さすが長年、作家と付き合い作品と向き合ってこられただけあり、
三沢さんや奈良さん、舟越さん、森村泰昌さん、草間彌生さんといった作家たちのことを
「自分の作品に脅迫されているアーティストたち。…つまり、自分の経典を自分でつくっているわけだから。…」と表現されているところにも、なるほどと思う。

言葉は違うけど、森山さんも同様のことを語られていて、
しかも森山さんならではの表現なので、うーんと唸ってしまう。
「…三沢さんは『三沢病』という病を病んでいるなと,…」
「やっぱり,『なんなんだ、これは?』感ですよね。三沢さんがゾロゾロとたくさんのエタイの知れない一団を引き連れて,ハーメルンの笛吹き男みたいに笛を吹きながら,僕のところまで来てしまったような.三沢さんが連れてこなければ、ぼくはべつに見ないですんだのに,コイツらを(笑)。」

そして中川李枝子さん。
三沢さんが子どもの時から知っているという和やかさの中,興味深い話が続くのだが、
『ぐりとぐら』は、保育士をされていたときに、子どもたちが『ちびくろさんぼ』を1ヶ月間,
「とことん楽しんだお陰で」、「ちびくろさんぼ以上のものを保育園の子にご馳走したくて,あのお話を作ったんですよ。」
というところには、

そうだったのか!それで、ホットケーキじゃなくて、大きい卵入りのカステラなのか!

と、感動とともにものすごく納得し、
「私は子どもの可能性の引き出し方を,1冊の絵本(『ちびくろさんぼ』)から教わりました。」
と、『ぐりとぐら』誕生の秘話を思いがけず知ることができて嬉しかった。
そのほかにも、創作のこと、子どものことなど、いいお話がたくさん出てくる。

と、いうことで、会期中に展覧会を観られなかった人にも、
作品写真や展示写真、ドローイングの図版も盛りだくさん、制作中の三沢さんの姿も見られる、
豪華対談3連発のこの作品集はおすすめです。

なお展覧会は平塚の後、北海道立旭川美術館、高崎市美術館、伊丹市立美術館、ふくやま美術館と巡回していくそうです。お楽しみに。

「三沢アニマルズ」を堪能した後は、庭を走り回っていたRQ。
DSC09064.jpg
DSC09062.jpg
屋外彫刻は柳原義達…。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://artmama.lammfromm.jp/weblog/mt-tb.cgi/81